あの人、ホント空気読まないわよねぇ・・・
空気を読まない人を、日本人は比較的嫌がります。
なぜ日本人は空気を読むことのほうが良い、と思っているのでしょうか?
当たり前のことすぎて、あまり考えたことがないかもしれません。
私たち日本人特有の 空気を読む、という感覚。
脳科学者である中野信子さん著書『空気を読む脳』は、そんな疑問を脳科学の視点から、興味深く掘り下げて教えてくれます。
私はこの本を読んで、漠然と抱いていた日本人固有の感覚を、より明確に理解することができました。
こんな方におすすめ
- 日本人の特徴を、脳科学の観点から理解したい。
- 日本社会に生きにくさを感じる。日本の社会は疲れる。
- 自分の子供、職場の部下など、人材教育に悩んでいる。
もちろん以上の理由がなくても、とても面白い内容なので、万人におすすめの一冊です。
では私が読んで印象に残った箇所など、レビューしていきます。
日本人は世界一不安になりやすい?!そのワケとは
セロトニンは安心感のキーポイント
日本人は歴史的にみても、個人より集団を重んじる傾向にあります。
そして不当に対しても厳しい。
コロナ禍では自粛警察の出現、SNSでの誹謗中傷もそうした表れのような。
中野先生によると
日本人は真面目、実直、自己犠牲もいとわないけど、一度怒らせると何をするかわからないという性質
これが遺伝子から分析してもわかるのだそうです。
どういうことかというと。
その理由、セロトニンがキーポイントとなります。
セロトニンとは脳内にある神経伝達物質。このセロトニンは十分にあると安心感を覚えたりやる気が出たりする物質です。
逆にセロトニンが不足するとどうなるのか?
セロトニン不足は、ストレスがたまりやすくなるなど、体調に影響を与えます。
そしてそのセロトニンの分泌量を調整するのが、セロトニントランスポーターというタンパク質。
セロトニントランスポーターの量が多いほど、セロトニンを使い回すことができ、気持ちが安定するのです。
ところがこのセロトニントランスポーターの量。
日本人は少ない人の割合が多いのだとか。なんとその割合97%!
こうして性格遺伝子に着目すると、世界的にみても。
日本人は不安になりやすい。
こういう遺伝子性質があることがわかる、とのこと。
心配性で慎重。繊細な日本人が遺伝子的性格だったなんて、驚きます。
で、セロトニントランスポーターの量は意図的には増やせないのでしょうか?
はい、効果的と言われているのは、朝の日光浴。
※長時間日光浴をしてもセロトニンは無限には増えないそうです。
朝の日を浴びることで夜の眠りも深くなるんですって。セロトニン大切ですね!
では日本人のセロトニントランスポーターの量が少なく、こうした性質の遺伝子を持つようになった理由は何故なのでしょうか。
不安な日本人に何故なった?
まず地理的な歴史背景があります。
自然災害の多い日本。
生き抜くために、リスク回避と万が一に備えることを常としてきました。
そして何かあった場合、一致団結して災害に備えなければならなかった。
そのために常に個よりも共同体を重んじました。共同体からはみ出す行動は許されません。
よって慎重に目立たず行動してきた。それが生き延びるために必要だったと、中野先生。
こうして不安と背中合わせの中、我々の祖先は日本で生き延びてきたのです。
結果、今生き残っている日本人に不安遺伝子が多いのも、不安を持つ人が生き残ってきた証、ということになるわけです。
必要であったとは言え、いつも不安だなんて、マイナス要素にしか思えないけど!
しかし中野先生曰く、これこそ日本人を長寿大国にした一因なのだ、といいます。
幸福度が低い日本人。。それが長寿の秘訣!?
世界幸福度レポートによると、日本人の幸福度はいつも低いのだそう。それって一見悪いように思えます。
しかし幸福度が高いことは陽気で楽観的である、と言い換えられるわけです。
日本人は「悲観的になりやすく、真面目で慎重であり、粘り強い人たちであることを示す遺伝的性質を持っています」と、中野先生。そんな遺伝レベルの性質を持っているのですから、幸福度をあげるのはなかなか難しい、と。
ところが長寿の人には、共通する性格があるそうです。「悲観的で真面目で慎重」といった性格です。
逆に「陽気で楽観的」であることは長寿でない人の共通。
これ、えー!って思いませんか?ポジティブに明るく生きる方が長生きできると勝手に思ってたので(笑)
マイナスとも思える日本人の遺伝的な性質は、長寿にとってはプラスに働いている、というのは面白いなぁと思いました。
合理的でないことも大切!
脳科学や心理学から科学的根拠のエビデンスに基づいて、何かと効率化や合理化が良しとされる風潮の昨今。
が、中野先生は合理的でないことも、人類が生き残る上で必要であったはずだ、といいます。
私はこの辺りを読んで、目からウロコが落ちるようでした。
♪わかっちゃいるけどやめられない、って昔流行った歌があります。
コントロールできない部分があるからこそ、その弱みを活かし工夫し続け、人間は生き残ってきたのだろうというのです。
適度に鈍感であること、忘れっぽい、愚かである、そういうことも集団として協調行動をとるためには必要だったと、中野先生。
脳科学的にみても、わかっちゃいるけどやめられない、それも人間です、合理性を欠くことも悪いことではない。。
と、知ったらちょっと気が楽になりました(笑)
以上が私の感想です、
他にも人の才能の伸ばし方、褒め方、やる気の起こし方、など、興味深い話が満載です!
〜余談〜
♫わかっちゃいるけどやめられない、は、「スーダラ節」という昭和のスター植木等さんの大流行した曲。植木さんは初めてこの歌詞を渡された時こんないい加減な歌は歌えない。。とかなり悩まれたそう。と、いうのも植木さんのお父様はお寺の厳格な住職さん。住職の息子がこんな歌を、と思ったのです。悩んだ挙句お父様に相談。歌詞を見せるとお父様は笑って『親鸞は晩年に同じようなこと言っている。人間は頭でわかっていても、甘い誘惑にどうしてもなびいてしまうものだ、と。これは人間の本質だから歌うべきだ!』と、おっしゃったそう。極めた人間も同じ悩みがあったと思うと、なんだか楽になりますね!